本屋のバイトが好きな本 - 本屋大賞2007分析(2)
一瞬の風になれ(佐藤多佳子)を、書店員が「いちばん!売りたい本」として選んだ本屋大賞*22007。前回の分析では、女性支持が高いのは、三浦しをん・宮部みゆき・小川洋子、男性支持が高いのは、劇団ひとり・万城目学・三崎亜記、と、大賞とは大分違った結果が出てきました。
本屋大賞2007では、2次選考候補の10作品について、男女別支持率の他、10台〜20台(若年層、青年層)、30台〜40台(壮年層)、50台(老年層)以上の3段階に分けて、年齢別支持率が公開されています。
支持者の年齢層比
今回は、若年層・青年層(10台〜20台)と、壮年層・老年層(30台〜)の2つに支持者を分けて、分析してみたいと思います。若青と壮老に分けた支持率分布は以下の通り。一瞬の〜では年齢不明が数パーセントあったため、比例配分しています。
○ 夜は短し歩けよ乙女(森見登美彦) | 若青49.7% 壮老50.3% |
風が強く吹いている(三浦しをん) | 若青47.6% 壮老52.4% |
終末のフール(伊坂幸太郎) | 若青46.5% 壮老53.5% |
図書館戦争(有川浩) | 若青45.5% 壮老54.5% |
陰日向に咲く(劇団ひとり) | 若青45.2% 壮老54.8% |
名もなき毒(宮部みゆき) | 若青43.9% 壮老56.1% |
ミーナの行進(小川洋子) | 若青41.2% 壮老58.8% |
◎ 一瞬の風になれ(佐藤多佳子) | 若青39.2% 壮老60.8% |
鴨川ホルモー(万城目学) | 若青36.2% 壮老63.8% |
失われた町(三崎亜記) | 若青34.6% 壮老63.4% |
まず目につくのは、大賞 ◎ 一瞬の風になれ(佐藤多佳子)と2位 ○ 夜は短し歩けよ乙女(森見登美彦)の位置。一瞬の〜は、壮老層の支持が高いのに対して、夜は〜は、圧倒的な若青層の支持を誇ります。
一瞬の〜は、一種の青春ノスタルジー小説、夜は〜は、初心な恋に憧れる青春真っ只中小説、という印象を持っているんですが、これとも合致する結果です。
男女別支持比の場合と違って、割合がなだらかに変化しているので作品の明確なグループ分けはできない感じ。それでも、鴨川ホルモー(万城目学)と失なわれた町(三崎亜記)の荘老支持の高さには、特筆すべきものがあります。
歳の違うあの人と話を合わせるには?
本屋大賞ノミネート作の10(+2)冊を今から読むのは大変だし、書店で働くちょっと年上・年下のあの人と話題を合わせたいなら、どれを読むべきか。
学生アルバイトだけど、ちょっと背伸びをして年期の入った店員を唸らせたい、なんて方には、三崎亜記に万城目学。
給料も増えないしそろそろ転職かな、なんて考えつつも、まだまだ気は若いところを学生アルバイトに見せたい方なら、森見登美彦に三浦しをん。
逆に言うと、若い人の前で夜は〜の悪口を言うのは危険キケン。年上の人の前で 失われた町 のどこが面白いのかわからない、なんて呟くと、歳をとらないとわからないこともある、なんて諭されたり侮られたりする可能性あり、ということのようです。