霧舎巧 傑作短編集

yomimaru2007-05-09

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著:霧舎巧 デ:大路浩実 講談社文庫*1

約束のないクリスマス、冴えない先輩 大前田とともにケーキ持参で部室に向かう霧舎は、少女の声の空耳を聞いて――クリスマスの約束」ほか全六篇の伏線被覆短篇集。
本作を読んで、作家名と同じ名前の登場人物が事件を語る形式のミステリーには、名探偵=作家名のパターンと助手=作家名のパターンの二通りがあることに、今さら気付きました。本作は後者だし、法月綸太郎の冒険(法月綸太郎) *2 *3は前者。
好意を寄せる図書館司書穂波にあしらわれる綸太郎の姿は微笑ましく見ることができるんですが、ユイとの関係を冷やかされる霧舎の姿は、何だか妙に気恥ずかしい。
どうも私は、名探偵じゃない登場人物の名前が作家名だと、その登場人物に作家本人の願望がモロに現れている、と感じちゃうみたいなのです。そういえば、冷たい校舎の時は止まる(辻村深月) *4 *5 *6や動物園の鳥(坂木司) *7でも同じような感じを受けます。
作者からの挑戦に果敢に挑む系のミステリ読みは、逆に名探偵=作家名の名探偵恋愛譚の方に気恥ずかしさを感じるんでしょうか、興味津々。
それはさておき、「このはしわたるべからず」的トンチって、叙述トリック分類Dに使えるのかも? なんて感じました。

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