首無の如き祟るもの

yomimaru2007-06-01

bk1
著:三津田信三 画:村田修 原書房*1

媛首村名家の跡取り長寿郎に秘かに憧れる使用人斧高が推理作家 高屋敷妙子に語る、跡取りの秘儀で起きた首無し殺人。その真相は――お首の行方は誰ぞ知るミステリー。
終戦前後の混乱期、科学捜査どころか、指紋で人の区別ができることを一般人がまだ知らなかった時代を舞台にするミステリーでは、首無し殺人一つとっても、その動機の可能性の広がりが現代とは大きく違います。そういえば、占星術殺人事件(島田荘司) *2も似たような舞台設定でした。
200年前の媛首様の悲劇を下敷きにした惨劇が13歳の双子の兄妹が執り行う秘儀の途中、生き残った兄の23歳の秘儀の途中と次々に起きるところには、八つ墓村(横溝正史) *3っぽい展開。もっとも、旧家の当主を巡る怨念とか閉塞した村の圧力とかはあまり感じられず、さらりと流されています。
最終的な結末は本作の方がホラー寄りなのに、八つ墓村の方がおどろおどろしく感じられ、本作には寒気がする爽やかさ、のような矛盾した感じがするところが面白い。
身辺雑記に続き事件回想と、作家連載形式で語る始まりからすれば、叙述トリックを用心しながら読み進めるのは当然なんですが……この真相には驚きました。
少年愛の美学(稲垣足穂) *4風味よりも大正耽美の百合風味の方が強い本作ですが、そういう趣味に興味がない方にもお薦め。

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