1000の小説とバックベアード

依頼者一人のために物語を集団で制作する片説家の会社を馘になった27歳の僕のもとに、失踪した妹の手がかりを得るため小説家になれ、との依頼が――小説を書くことで人は幸せになれるのかメタフィクション小説
命知らずの本読みの集団 アルゴー読書会が登場する小説伝(小林恭二) *2 *3が、何故小説を読むのか読者の側から描いているとするなら、本作は、何故小説を書くのか作者本人の側から描いたもの。
作者本人を知ってるだけじゃないんですが、本作の主人公の《僕》と鏡家サーガ(佐藤友哉) *4の登場人物達を比べると、《僕》には作者自身からずっと離れた装いを感じるんですが、本作の方が私小説っぽくて鏡家の方がキャラクター小説っぽい感じを受けるのは何故なのか。
ヴィクトリアン・ローズ・テーラー(青木祐子) *5では、着ると不幸になる闇のドレスと対抗するため、お針子クリスが、想いがかなう恋のドレスを仕立てているんですが、本作にも、危険な物語を作る《やみ》が小説家の敵対勢力として登場します。
本作を読んでいたら、「着るとドレスを仕立てたくなるドレスを、クリスが自分のために仕立てて、闇のドレス制作集団と戦う」などという架空のシーンが頭から離れなくなって困りました。

><