チルドレン

著:伊坂幸太郎 画:宗誠二郎 講談社文庫*1

衆人からはうかがい知れない自分本位の倫理で行動する陣内に困惑しつつも、彼の意外な行動で明らかになる不思議な真実に皆は驚き――心暖まる5篇からなる連作短篇集。
銀行強盗が人質全員に自分と同じ格好をさせるインサイド・マン*2と同じ趣向の第1話「バンク」では、全員がお祭アニメ面をかぶることになります。
この話では陣内は大学生。誰彼かまわず言い負かす(非)論理を持つ彼の姿は、究極超人あ〜る(ゆうきまさみ) *3鳥坂先輩を代表とする80年代スーパー高校生そのもの、といった感じ。
ところが第2話「チルドレン」では、彼は、家庭裁判所の調査官になっています。スーパー高校生は「社会規範と対立関係にあり、卒業後の進路は不明確」とのことですが、本作の陣内は社会規範の象徴である裁判所に就職して、かなりうまく働いている模様。
第3話「レトリーバー」はそんな陣内が失恋する話ですが、この話の彼は「恋愛にビビらないスーパー高校生」的。
第4話「チルドレンII」では、おじさんロックバンドで超恰好良くきめた彼も、大学生時代の第5話「イン」では恰好悪い状況。そんな状況でも、やることはやる陣内。彼に「父親との確執」という欠損を持たせたところが、単なる「スーパー高校生」に留まらないための、絶妙の塩加減なのかもしれません。

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