パラレル

著:長嶋有 画:tanaka keiko 文春文庫*1

自分の企画で大ヒットを出したゲーム会社社員の僕は、続篇制作の際の外圧を理由に退職、妻とは離婚、でもそれなりに何となく日々は過ぎて、気になる娘も現われ――3つの時代を行き来するゲームデサイナーファンタジー
フラワー・オブ・ライフ(よしながふみ) *2 *3のオタク男 真島ならば、カップルの受攻にこだわり、モノを買うためにガテン系のバイトで働き、綺麗な顔と体を持つところ。らき☆すた(美水かがみ) *4 *5のオタクオヤジの心を持つこなたなら、可愛い女の子であるところ。
ちょっと見には、「こんなことない!」で済まされるはずの彼らの尖った特徴も、それ以外の部分の「あるある!」の骨格がしっかり描かれているため、不思議に身近に感じたり、妙に心安らかになったりします。こういう風に進化するって手もあったんだよな、でもそうしてたら現実だとうまくはいってないよな的感慨とでもいいましょうか。
本作の場合、ゲーム業界での《僕》が「あるある!」で、女性を求めるのに積極的で結構モテる《僕》が「こんなことない!」。米光一成の解説を読むと、長嶋有の主張「人間そんなに簡単に癒されるわけないよね」とは裏腹に、かなりの数のゲーム業界人が本作に簡単に癒されている模様。
日常(あるある!)が豊かってだけじゃ満足できない、日常の延長線上にある非日常(こんなことない!)の豊かさがないと! と、自分の業の深さに思いが至った一冊でした。

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