建てて、いい?

著:中島たい子 写:中川正子 講談社*1

三十半ばの独身女 真里は、見合いの相手が建築士だったことを契機に何故かとんとん拍子に状況が進み、家を建てる気になるが――仕事、恋、結婚よりも欲しいのは家ストーリー。
女一人でハウスメーカーの展示場に行ったときの居心地の悪さがひしひしと伝わってきて微苦笑。ぷっすま*2物件拝見トレジャーバトルは別として、やっぱりああいうところって家族向けですよね。
みんなのいえ*3は、家を建てるという施主夫婦の一大事業が、段々他人のモノに変容していく様を描くコメディですが、本作は、家を建てることが、独身女にとって、その周囲にとってどんな意味を持つのかを探る展開。中心はあくまで真里にあります。
一発逆転狙いの外国留学モノとの違いは、環境を変えれば何とかなる、という根拠のない目標に向かうのではなく、環境を変えようとする過程だけで、実は当初の問題は解決してしまっている、ということでしょうか。
表題作のほか、別れた男からやってきた宅配便の不在票を前に、悶々と回顧する女を描く「彼の宅急便」が収録されています。悶々とした少年が少女の真意を推し量る悪魔のミカタ666(うえお久光) *4とは逆バージョンですが、やっと手元に届いた荷物を開けたときのオチが痛烈。気に入りました。

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