裁縫師

著:小池昌代 写:Michael Prince/Corbis 角川書店*1

お屋敷の離れでアトリエを開く裁縫師の元へ連れて行かれた9歳のわたしは、体に触れる彼の指に炎を立ち上らせ――禁断の官能に身を震わせる少女を描く表題作他5篇の短篇集。
「裁縫師」では9歳の少女が、「野ばら」では11歳の少女が、それぞれテーマになっている本作。女性はなぜ男性の長い指に惹かれるのか*2なんて話題もあるくらいで、少女が心震わせるポイントが、《自分の首筋や骨》であり、相手の《男の指》である点、妙に説得力があります。これも著者が女性なせいでしょうか。
年齢的にはさほど違いのない少女をヒロインとする円環少女(長谷敏司) *3、紅(片山憲太郎) *4、SHINO(上月雨音) *5と比べると、彼女達とはちょっと違ったところを見つめていて、その視線が生々しい。
男にせよ女にせよ、大人にせよ子供にせよ、《悪いヤツ》に惹かれてしまうのは仕方がないことのようで、少女本人に感情移入して読める方にお薦め。少女を《相手》として読む人は絶望を感じちゃうかも。

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