人柱はミイラと出会う

著:石持浅海 画:松尾かおる 新潮社*1

新橋の建設現場であがる万歳の声の中、白装束の人柱が自ら川に沈むのを見た留学生リリーは、日本の建設技術に驚くが――ニッポンの異様な伝統文化ミステリー。
土地神との契約を司る人柱、政治家のプロンプターとして働く黒子等、どこかで聞いたことはあるものの現実には殆ど残っていない日本の昔がそのまま生き残っていたら――に基づく架空設定ミステリーの趣向は、超能力の存在を前提にした神麻嗣子シリーズ(西澤保彦) *2魔術を肯定したトリックスターズL(久住四季) *3と似た趣向。
設定そのものがかなり面白くて、それだけで独立しちゃっている印象があるところや、動機を想像しただけで終わる話が多いところは、浦島太郎の真相(鯨統一郎) *4とも雰囲気が似てます。主要登場人物にエリート感がちょっとあって、誰もが論理的・理性的に行動するところは、他の石持作品と同様。
以前に短篇を雑誌で読んだときには、人柱職人にして謎解き者の東郷に憧れる留学生リリーのことを、東南アジア出身だと勝手に想像してたんですが、彼女は米国出身で、それが最後のオチに効いてました。

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