からくりアンモラル

男からのラブレターに嫌悪を感じた藍子(12)の前に突然現れた、5年後と7年後の自分。二人が藍子に手解きすることは――「あたしを愛したあたしたち」を含む全9篇の性愛ファンタジー
自己愛、同性愛、近親愛、美への耽溺、自殺への憧憬と、本人達が真剣であればあるほど、傍から見ると滑稽に見え、歳をとってから思い返すと恥ずかしくなるテーマが盛沢山。
どれか一つを単独で取り上げればそれなりに重苦しくて切なくてエロい話に仕上げることもできそうなのに、一つの話にぎゅうぎゅうに詰め込まれたネタが互いの臭みを打ち消し合っている感じです。
夏休みの宿題を未来の自分に手伝ってもらう、というのはドラえもん(藤子・F・不二雄)*2によく出てくるモチーフで、結局は嫌なことを何回もやらなければならない自業自得な結果に終わるんですが、「あたしを〜」は、美ではなくて醜で〆めることもできる作者の力技で《ハッピーエンド》に持ち込んだ形。
奔放なジゴロの父に振り回される娘を描く「ナルキッソスの娘」でも、綺麗に終わせることが可能なのに、オチで可笑しな仕込みをしちゃってます。サービス精神満載の一冊。

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