愛でしか作ってません

著:後藤田ゆ花 画:沢内サチヨ 講談社*1

倒産寸前のBL出版最大手の編集を務める《わたし》は、編集部の身売りをかけて、かつてのコミック化での細い関係を頼りにK談社の文芸編集 白鹿さんに会いにいく――実話と重ねて読むべし編集小説
ボーイズラブ出版大手のビブロス倒産を下敷きにした、おそらくは実録的な内容の本書では、BLコミック担当編集の一つのモノの見方が感じとれます。漫画家にせよ、小説家にせよ、平均して見れば経済則にしたがって動くのかもしれないけど、個別に見れば人についていく、そういう現場感覚。作家の担当替えや他社への紹介シーンが興味深い。
エピソードが雪崩的に続くところは玉響荘のユーウツ(福田栄一) *2的。かかっているものが《自分の指》か、《愛》か、が違いますが。あと、編集部の面々が占い師エイジの言葉に左右されちゃうところには、日頃神仏やスピリチュアルに興味がない人間でも、こういう状況になるとそうなっちゃうのかなーという感じを受けました。
売り込み途中で出会った他社の編集や営業をモデルに《わたし》が書いた初々しいBL小説?が途中途中で挿入されてます。人と見れば受け攻めに頭が向かうとなりの801ちゃん(小島アジコ) *3的なノリがOKなら男でも大丈夫、の一冊。

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