サウスバウンド

著:奥田英朗 画:フジモト・ヒデト 角川文庫*1 *2

元過激派で今はプーの父 一郎がフツーの父親じゃないことに諦念すら感じる小学生6年生の二郎は、悪徳中学生カツに因縁をつけられ――時代を超えて訪れるマレビトストーリー。
昭和も遠くなりにけり、本作も『内閣総理大臣織田信長』(志野靖史) *3同様、過去からやってきた人が現代を掻き回す展開です。
上巻は中野ブロードウェイ近郊での小学生の友情ストーリー、下巻は西表島ムラ社会の距離感ストーリーなんですが、『イリヤの空、UFOの夏』(秋山瑞人) *4が上巻、『ミナミノミナミノ』(秋山瑞人) *5が下巻、セットにしてみました、みたいな感じ。イリヤも一郎も、普通とは違う価値観で生きている《異邦人》で、主人公の生き方を変えた後に、彼らが迎える最期も、これらの作品はどこか方向性が似ています。
日々の生活が事実上無料で成立してしまう島の生活は、ある種のベーシックインカム社会なのかもしれません。
うつろいやすい小学生の恋心もお薦め。

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