食いものの恨み

食いものの有り難みを知れ、と主張する戦争経験者の思いといえば、肉に対する素朴な憧れ、白いご飯に対する異様な執着――食の痛快エッセイ。
『あれも食いたいこれも食いたい』(東海林さだお) *2といいつつも、白飯に納豆、生卵、ちりめんじゃこに逢着するのだ、と痛烈なパンチから始まる本書。何処其処で何々を食べた、の話もあるんですが、自分で自分用の料理をする話題もあり、役立つネタが入ってます。
生野菜に塩辛をなすりつけて酒の肴、塩辛をドレッシングに放り込んで隠し味、酒盗を炒飯に入れて味付け、のような、言われてみれば、のアイディアが結構ありました。
山羊肉の刺身(ルイベ風)のそこはかとなく腋臭くさくもある匂い、とか、インド人はボンカレーが苦手、とか、SPAMの味噌汁は豚汁風、とか、変な知識も面白い。
料理について、他人のための愛情論じゃなくて自分のための技術論、夫や子供のためのおかずより自分で食す一品、ふるまい蕎麦より自分でたぐる蕎麦、そういう方向に興味がある人なら是非。

><