1950年のバックトス

著:北村薫 画:謡口早苗 新潮社*1

小説家 金子信介の家に、万華鏡を手土産に突然やってきた女性 安奈かなえは、彼の小説の登場人物 手鞠光一郎との交際を認めてくれるよう願うが――キャラクターの一つのあり方を描く「万華鏡」を含む掌篇集。
「万華鏡」では、手鞠を再登場させたときの取扱いに信介が言及したときと、シリーズものではないから再登場させる予定はない、と言ったときとで、かなえの表情が大きく変化するシーンを読んで、この掌篇の《キャラクター》は、一つの生を生きるキャラクターなんだな、と予想。一つの生しか生きられない人は複数の生を生きることができるキャラクターを求め、複数の生を生きうるキャラクターは一つの生を求める、ということなのかも。
本書の題名を聞いたときは、『万延元年のフットボール』(大江健三郎) *2よりも『紀元2600年のプレイボール』(大和和紀) *3 *4 *5の方が思い浮かんだ私ですが、表題作「1950年のバックトス」は野球モノで、しかも、この予感はかなりイイ線を行ってました。『メイプル戦記』(川原泉) *6 *7が好きな方にお薦め。

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