チーム・バチスタの栄光

著:海堂尊 画:赤津美和子 宝島社文庫*1 *2

大学病院内出世抗争から離れ不定愁訴外来を担当する万年講師 田口は、成功を重ねる心臓手術チームに突如訪れた連続術中死の裏を探れとの院長の密命に聞き取り調査を開始するが――現役医師が描くメディタル・サスペンス、第4回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。
題名を聞いたときには、「バチスタ」のラテンな響きに、サッカーの裏側を巡るスポーツものかな、なんて思ってました。ラテン系医師が提案した大胆な手術法を巡る話なので、語感そのものは合ってましたが、ジャンルはまったくの見当違い。
前年の最終選考作『血液魚雷』(町井登井夫) *3も医療もので、次の手術へ向けての不安を煽るやり方には共通するものがありますが、実の医者が描くだけに、本作の方が学内政治のドロドロにより一層着目している感じ。
解説(茶木則雄)では、『町長選挙』(奥田英朗) *4の変態医師伊良部と、本作の探偵役にして厚労省の調査官 白鳥と対比してますが、自分の欲求に忠実、という点では、伊良部に似てるのは田口の方かもしれません。
大学病院の勤務医の結婚式に出席した経験がある人なら、センセイ方のあの振舞いの遠因がわかるかも的な作品。お薦め。

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