群青の空に薄荷の匂い 焼菓子の後に
小学校時代に怪我をした指先を時折見つめてしまう癖のあるわたしは、高校からの帰りの散歩道、あの頃からぐっと背が伸びた安藤君に出会って――甘くてビターな15歳の、平凡で特別な毎日ストーリー。
扱いがちょっと難しいこともある母との会話や母と離婚して別居している父とのやりとり、そして中学1年からの親友菜穂とのダベりのひととときと、設定や筋立だけは確かに平凡。安藤くんとの出会いからのドラマも、生きるの死ぬの難病だのといった派手な展開は一切なし。
二人とも別段異能の持ち主でも世界を守る使命を帯びてもいませんが、それでもトキメいたり疑心暗鬼に陥ったりのわたしに、きっちり恰好いい男の子を演じる安藤くん。しみじみとした劇的、というか。
素敵な物語という青い鳥は、身近なところにだってありふれた展開にだってきちんといる、そんなことが感じられる一冊です。お薦め。
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