厨房ガール!

著:井上尚登 画:大槻香奈 角川書店*1

元警察官の理恵は、名門料理学校SWATでも劣等生、しかも緊張すると得意の合気道で人を投げ飛ばしてしまう癖は相変わらず――珊瑚礁のように澄んだコンソメ・コメディ。
天麩羅の油の温度が180度ってのは昔の話、今の油は純度が高いから220度でからりと揚げよう、みたいなちょっとした美味しい知識が伝わってくるところは、同じく料理学校を舞台にした『ハッスルでいこう!』(なかじ有希) *2 *3にも共通する嬉しさ。
出てくるレシピは、『僕たちは歩かない』(古川日出男) *4同様、自炊で直ちに役に立つわけじゃありませんが、本作の料理は奇を衒った感じがなく、想像の延長線上にある美味しさを感じます。その発想を含め、本作で描かれる料理論は、『料理の四面体』(玉村豊男) *5と同じく、あくまで技術論で押すところが好印象。
澄んだコンソメを作るにしても、パスタを味濃く茹でるにしても、まずは実験、というところなど、理系人間で料理に興味のある人に特にお薦め。

><