傷物語 こよみヴァンプ

著:西尾維新 画:VOFAN 掲:KODANSHABOX MAGAZINE パンドラ Vol.1 2008 WINTER 講談社*1

弱味を作ることをおそれて友達を作らなかった暦は、彼に急接近する委員長キャラ翼から、金髪の吸血鬼の噂を聴くが、噂をすれば影――残酷ホチキスな彼女ひたぎに出会う『化物語』(西尾維新) *2 *3以前の阿良々木暦を描くバッドエンドストーリー。
吸血鬼キスショットがどうなるか、も、翼との関係がどうなるか、も、すでにわかっている状態で読み始めた本作は、何だか、『セラフィム・スパイラル〜少年の檻〜』*4で、主人公暁人が幼馴染みの少女 紗月に飼われるバッドエンドをリプレイしているような感覚。
万事に積極的で動じない翼と、押されまくりの純情エロ激ニブ少年暦の掛け合いも、楽しいことは楽しいんですが、暦と翼の関係の顛末がわかっているだけに、その明るさの中に一沫の寂しさを感じてしまいます。
自分の命を捧げる、とか、君に一生を縛られる、とか、互いに傷を舐めあおう、とか、そういう暦のロマンチックな態度は、実はできるだけ決断を先送りにしようというモラトリアムに過ぎないのかも。各ヒロイン達に暦が見せる明るいおバカな雰囲気と、吸血鬼に見せる何とも深刻で感傷的な雰囲気と、この2つのギャップは分離してしまった生クリームみたいで、妙にクセになります。
好きになっても実がない男の子なのに、やっぱり好きになってしまう、羽川翼の失恋ストーリーと思って、全話をもう一度読み返してみよう。

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