君のための物語

著:水鏡希人 画:すみ兵 電撃文庫*1

独り身の寂しい夜、自殺しかけた女性を助けて川に落ちた私は、美しい青年レーイに助けられ、彼女の見舞いを受けることに――ワナビ脱落しかけの僕に現われた読者ストーリー、第14回電撃小説大賞金賞受賞作。
同じくワナビ小説で似た題名の『君だけの物語』(山本ひろし) *2と比べると、本作では「作家になること」そのものへの欲求や理由付けといった、本人内面の問題よりも、彼の周りで起きた事件や、その事件を綴った物語の影響に着目している感じ。小説家になれました体験記、みたいな。
壁井ユカコの評「何はなくとも、この本の素敵な第一章を読んでみてください。」にもある通り、助けた女性セリアと私とレーイの交流を描く第1章は、それだけで一つの話に綺麗にまとまっています。本書全体の中における第1章の位置付けは、『塩の街』(有川浩) *3と同じで、一番印象に残る断章が先頭に来ています。
そういえば、湿っぽい話が続いた後、ラストの章で雰囲気が電撃的に変わるとこも似てますね。

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