ダンシング・ヴァニテイ

著:筒井康隆 オ:小池隆 新潮社*1

誰かが家の前で喧嘩していると言う妹におれは、とばっちりを受けないようみんなを奥の間に連れていけと命じるが――執拗に繰り返される反復記述の乱丁ならぬ乱調小説。
誰かが家の前で喧嘩していると妹が言うシーンで始まる本作ですが、「魔法・存在・誤配――筒井康隆『ダンシング・ヴァニティ』論」(桜坂洋)/「新潮2008年3月号」*2を読むために手に取りました。『All You Need Is Kill』(桜坂洋) *3が、プレイヤーキャラクターが死ぬたびにリセットが自動的に係る状況を描いているのに相当するとすれば、本作は、ノベルゲームで「ルートを間違えた!リセット!」で、最初に戻るような描き方。ところがこの反復記述、毎回テキストが異なるのです。
ノベルゲームの共通ルートのテキストは何回も読むと飽きるせいか、既読スキップの機能がついているのが通例で、『All〜』でも、「既読部分」を大胆に省略する手法が取られていました。それに対して本作は、既読スキップができないノベルゲームで共通ルートのテキストを何回読んでも飽きないようにするには――という課題を究極までつきつめたモノに相当します。
誰かが家の前で喧嘩していると妹が言う展開を頭に思い浮かべつつ、「魔法・存在・誤配」と一緒にお薦め。ループモノの新技法に興味のある方は是非。

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