天正十二年のクローディアス

万延元年のフットボールもルー語のたたずまい
著:井沢元彦 写:Brian Sytnik/Masterfile/amanaigames 小学館文庫*1

武士道とは死ぬことと見つけたり、化猫騒動で有名な鍋島藩聖典葉隠』成立に至る陰謀とは――表題作「天正十二年のクローディアス」を含む逆説の日本歴史ミステリ短篇集。
葉隠入門』(三島由紀夫) *2では死を覚悟することで生の力が得られる、と読み解いている『葉隠』(山本常朝) *3 *4 *5ですが、大隈重信佐賀藩への偏狭な滅私奉公を説くのみ、と、『葉隠』に最大級の罵倒を浴びせている、とのこと。知りませんでした。
源氏物語*6 *7の謎を解く「夕顔殺人事件」/『読み違え源氏物語』(清水義範) *8と同じく対話形式で進む歴史の裏側の謎解きは、強引ながらも納得の結末です。
このほか、暗号にまつわる謎掛けで孫娘の結婚を決めようとする「三匹の獣」では、妖怪は出ませんが、ほのぼの感が『しゃばけ』(畠中恵) *9に似ています。老いた宮本武蔵が曲者の殺気を感じることができずに自身の衰えを疑う「剣鬼過たず」、空を舞う金毛天狗の謎を信長が見破る「修道士の首」なども収録、豊かなバリエーションのお薦め。

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