銀漢の賦

正義を求める銀漢は昴に叛旗を翻す
著:葉室麟 画:青山浩之 文藝春秋*1

かつて同じ道場で修行した小役人 源五と家老 将監は、月ヶ瀬藩の政争を機に、農民 十蔵の死の理由を知ることになり――第14回松本清張賞受賞作。
時代劇も学園異能も、登場人物が超絶技巧の必殺技を持っているという点では共通しますが、大きく違うのは、その中で前提とされる年月の長さ。舞台設定上数年間が限界の学園異能に対して、時代劇では、一人の人物の数十年を追うことも可能です。
本作では、現在の彼らを描く章と数十年前の彼らを描く章が交互に挟み込まれており、『小説伝』(小林恭二) *2 *3の作中作のように、各断章が次の断章を呼び起こす構成になっています。
読み進めるにつれて、その間に生じた一揆の真相や堰の工事にまつわる事情など、数々の謎が次々と解き明かされていく展開は、ミステリーの謎解きを読んでいるかのよう。冒頭を読み返すと、これから展開されるストーリーの伏線がずらり。実に自然な、驚きの伏線です。
源五の婿 伊織は、学園異能だと主人公の親友に相当しそうなキャラで、政争の中を口先でうまく立ち回る憎めない小悪党ぶりが楽しい。
お薦め。

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