死なない男に恋した少女

包丁一本 晒に巻いて、の非文性
著:空埜一樹 画:ぷよ HJ文庫*1

人をナイフで刺すことに快感を覚える快楽殺人者 桐崎恭子に襲われた狗人は、その不死身の体ゆえに、彼女から交際を求められ、他人を殺さないことを条件に付き合うことになり――刀は女、鞘は男の第1回ノベルジャパン大賞奨励賞受賞作。
主要登場人物に殺人者を据える点では『零崎双識の人間試験』(西尾維新) *2や『空の境界』(奈須きのこ) *3 *4と共通しているんですが、恭子を狗人の関係がちょっとドメスティックバイオレンスな普通の超甘カップルの雰囲気で描かれているせいか、殺人という行為をさらっと架空のものとして受け取ることができず、生臭さを感じちゃうのが本作の特徴。
そう感じさせる理由の一つは、恭子が自身の性癖に感情面で慣れ切っていて、法上の責任はともかくも、心情面で良心の呵責を感じていないからかも。
映画版*5では大竹しのぶの怪演が光る『黒い家』(貴志祐介) *6で「この人間には心がない」とのコピーがつけられた幸子が恋をした、かのようなミスマッチ感に肌が粟立つ一冊。

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