僕の妻はエイリアン

この惑星の脇役は主人公に斬られても過剰に苦しんではいけない
著:泉流星 画:さかたしげゆき・児島麻美 新潮文庫*1

言葉を額面通りに受け止め、普通の会話ができない妻の独特の行動は、まるで地球人に化けた異星人のようで――アスベルガー症候群との噛み合わない生活を率直に綴るユーモアノンフィクション。
障害者学級の教員の独白劇『縮んだ愛』(佐川光晴) *2では、主人公は個人的生活に障害者が入り込むことに強い拒否反応を示しますが、本作では、既に《異星人》が生活に侵入済み。高機能自閉症の《妻》を見つめる《夫》の視点から描かれる本作では、自ずと、《異星人》対策が沢山盛り込まれる構成になっています。
もっとも本作は、献身的な《夫》の感動の善人物語、ではありません。今でも週に何度も喧嘩するし、文章の端々には《妻》に対するイライラ感が漂っているし、で、完璧超人でないところに好感が持てます。
ある種の能力が高い《異星人》に対するフツーの日本人の反応、という点では、『ダーリンは外国人』(小栗左多里) *3にも似ていますが、『ダーリン〜』に時折感じられる「教え導く」感を、本作では《夫》視点をうまく使って消している印象。
本篇を読んだ後での著者あとがきが凄い。このあとがきのために本篇があると言っても過言ではないかも。

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