虐殺器官

デトネイター・オーガンも平和を侵す侵略者を裏切る
著:伊藤計劃 画:佐伯経多&新間大悟 ハヤカワ書房*1

米国情報軍でテロリストの逮捕・暗殺を担当する《ぼく》は、内戦や民族虐殺が激化した地域に必ず足跡を残している米国人ジョン・ポールを追うことになるが――南北戦争戊辰戦争1860年代の内戦ストーリー。
テロとの戦いが舞台となっている点は『華氏911』(マイケル・ムーア) *2と一見共通しているかのように思えますが、根底に流れるものは焚書世界を描く『華氏451度』(レイ・ブラッドベリ) *3や『リベリオン*4の方が近いかも。焚書官が文化に目覚める『華氏451度』『リベリオン』の展開を、本書では、さらに裏返しています。
《ぼく》ことシェパードが所属する組織を考えると、同じ「organ」の訳語としては、「器官」よりも「機関」がふさわしいような気が一瞬しますが、「器官」から連想される『超時空要塞マクロス*5のようなバイオ機器が登場するだけでなく、きちんとテーマにも絡んでくるところが嬉しい。
ブラッド・ダイヤモンド*6に登場する少年兵の怖さに痺れた方にお薦め。

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