ガーディアン

恋人は守護霊、「!?」をつけるか「さま」をつけるか
著:石持浅海 デ:奥沢光雄 カッパ・ノベルス*1

勅使河原冴に亡くした父が遺したモノは、彼女を襲う危機を2割増しの反撃で防御する《ガーディアン》。その反撃は、自動的なのか――父親は守護霊の奇想ミステリ。
未練を残して霊となりこの世に影響を及ぼすものの、その動機をいつしか忘れてしまって影響を及ぼすことだけがだけが存在意義となり、ついには悪霊と化す、という展開はホラーの定番ですが、本作の《ガーディアン》もかなりそれに近い感じ。超自然的な力で冴を守るものの守り方がだんだん自動的、機械的、単なるルールの適用になってきていて、「近くを通っただけで祟られる地縛霊」的な存在と化しつつある様子。
やはり機械的なルールで人を動かす超自然的な力を扱った『ぼくのメジャースプーン』(辻村深月) *2では、その力とどう対面し、どう理解し、どう使うべきか、を対話形式で論じた上で、最後にその力を発揮させる展開ですが、本作も、「勅使河原冴の章」でガーディアンの動作原理を読者に理解させ、「栗原円の章」ではガーディアンの力をどう使うか、を読者に見せ付ける構成になっています。
世間的には正しいとされる《信頼》《友情》のような心の働きのキモチワルサが石持作品の特徴の一つなんですが、本作では《肉親愛》が怨霊化することで心の動きが削ぎ落とされてしまっているせいか、いつものキモチワルサはあまり感じられません。日本昔話の妖怪と人間の知恵比べみたいな感じでしょうか。
一応ミステリなんですが、制限付きの超能力で特殊部隊に対抗系の異能バトルが好きな方にお勧め。

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