イマジン

♪Imagine there's no homicide
著:清水義範 カ:四ッ谷憲二 集英社文庫*1

23年前のベンチャー起業で成功した父と喧嘩して家を飛び出した翔悟がタイムスリップした先は、社会人2年目のしょぼくれた平社員の父が住む時代で――昭和末期の回顧録
翔悟が飛ばされた時代よりちょっと前に出版された『エスパー少年時空作戦』(清水義範) *2は、核爆発によって生じたタイムスリップが主人公の出生の秘密を解き明かす展開でしたが、本作では、そういうSF的側面は重要視されていません。
古き良き時代を『フォレスト・ガンプ』(ゼメキス) *3的に回想する切っ掛けになっているだけ、という感じです。
そういう回顧モノなんですが、『ALWAYS 三丁目の夕日*4のような「昔は良かった」的感慨は、本作には あまりありません。今の視線で当時をそのまま見たときに感じるであろう「ダサさ」がしっかり描かれています。回想モノなのに《自分が生きている今が最高》な匂いを出すあたりが素敵。
父子がタイムスリップで和解しても、今のきつい状況は変わらない『流星ワゴン』(重松清) *5、情けない父親を立ち直らせてラッキーハッピーな『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(ゼメキス) *6、この2作の中間あたりのハッピーさの本作は、IBM vs 日立・三菱の産業スパイ事件の記憶がある方にお薦め。

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