文学少女と神に臨む作家

神に臨む読者は一人のための小説を皆のための小説に変える

遠子に食べさせるために小説を書いてきた《断筆作家》心葉は、ななせと交際しているにもかかわらず、遠子のことが気になって――私は青春の幻影なのか物語本篇の終幕。
古典を引用した謎解きが基調のこのシリーズですが、全巻を通して見ると、かつて交際していた女の子が自殺騒ぎを起こしたことで、出版するための小説が書けなくなった作家 心葉を、一発屋で終わらせないためにあの手この手で遠子先輩がリハビリさせるストーリー。心葉がどんな味の小説を書いたとしても、必ずそれを受け入れる遠子の読者としての貪欲さが心に残ります。本読みはこうでなくてはならないのかも。
上巻を読んだ時点では、遠子と心葉は『銀河鉄道999*3メーテルと鉄郎みたいだな、と思っていたんですが、ななせの役割はガラスのクレアよりも『さよなら銀河鉄道999*4のメタルメナに近いかも。結末も、「私は青春の幻影」エンドというよりは、「鉄郎、999に乗りなさい」エンドでした。
本篇最終巻の今巻は『狭き門』(ジッド) *5が引用元でした。この後何冊か短篇集や外伝が出るようですが、どんな古典が紹介されるのか、それが楽しみ。

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