ステップ

猫は100万回生き、泥棒は9回生きる

女を巡るトラブルで清瀧会の幹部を刺して逃げ込んできた弟分 悟を助けようと動き始めた斉木は、殺されたはずなのに昨日に戻ってしまい――斉木のための再帰的な物語。
殺されると過去に戻る、との構成は、『All You Need Is Kill』(桜坂洋) *2にちょっと似ていますが、繰返しの回数が一桁(帯や目次を見ればすぐにわかります)で、自分を殺した犯人や事件の原因を探り、自分の死を避けることを目的とする点では、『DEAR 少女がくれた木曜日』(新井輝) *3の方が近いかも。
今は説明はできないが俺の言うことを聞け、という斉木の態度が周りの者に不審を抱かせ、かえって事態を悪化させる展開は巧妙。「いつもそう」と詰られる斉木の姿に説得力があります。
これは過去に戻った俺が何かをするんだな、と思わせるような、あからさまな伏線がそこかしこにありますが、それが「木を隠すなら森」的な効果を奏しています。『ドラえもん』(藤子・F・不二雄) *4のタイムマシンモノでは、結局すべてはのび太のせい、というオチが典型的で、そういう先入観があっただけにちょっと騙されました。
過去に戻ってもあまり動揺せず、状況をすぐに受け入れる主人公の態度に、妙に親近感を覚えたのは、ループモノを読み過ぎているからかも。

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