せせらぎの迷宮

「総理官邸に放火しそうな人」ランキング掲載の卒業文集の取扱い
著:青井夏海 画:ムラタユキトシ ハルキ文庫*1

卒業から二十年、担任だった杉本先生の定年祝いに文集をもう一度贈ることになった史だが、同窓生の誰も文集を持っておらず――小学生だからこその党派抗争の悔恨ストーリー。
文集用の原稿は書いたはずなのに、何故誰も文集を持っていないのか、文集のことを忘れていたのは何故なのか。こういう謎で「陰惨」な過去を予感させる展開で、ところどころに挟み込まれる文集から引用した文章の稚拙な表現には、『Pet Sematary』(スティーブン・キング) *2 *3の誤字や「放課後のピースキーパー」/『どうにもならない五里霧中?』(賀東招二) *4の檄文的な「怖さ」も。
小学時代の史の「先生のお気に入り」と見られることに対する反感がリアル。仲良しグループから外れがちなクラスメイトのまとめ役を期待されることが嫌で、逆に一番強いグループに擦り寄っていってしまうところが身につまされます。
小学生時代に自分がしたことを今から思い返すと、ある種のイジメかも、と、ちょっと胸がチクリとする方にお薦め。

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