アンゲルゼ 永遠の君に誓う

私を抱いてそして血を吸って

人類の敵アンゲルゼも魅了する歌の力を開花させ、学校に来なくなった陽菜の事情を知った幼馴染み覚野は、ある決意を秘めて陽菜の偽装彼氏 湊に会いに行き――少女が直面する苛酷な選択、衝撃の最終巻。
引込み思案の陽菜、彼女と距離をとってしまった覚野、一旦生じたずれがどんどん広がって、《話す》ことすらできなくなってしまう苛酷な状況には、「心配をかけるといけないから言わない」なんて微温さは、微塵もありません。
幼馴染み同士の淡い恋をどう決着させるのか、二人が自分の思いをきちんと伝えられるのか、そんな陽菜・覚野の本筋をしっかり支えるのが、上司の敷島が好きな有紗有紗が好きな湊、の、二つの想い。これが単なる伴奏に留まらず、本筋に暴力的に絡み合う展開は見事。この前半のクライマックスは、今巻後半のラストに匹敵する感涙モノ。
言いたいことを伝えあって、自分の生き方をしっかり決めて逃げない陽菜、自分の力のなさをしっかり悟って進み始める覚野、と、感動の成長の結末は、少年向けの『ラスト・レター』(笹本祐一) *2とは、ある意味で正反対の決着点。登場人物としても読者としても、女の子の方が先に大人になることを しみじみ感じます。
2冊に分冊しても良かったくらいの濃さにも圧倒されます。題名は『デビルマン』(永井豪) *3 *4とまるっきり逆ですが、群集心理の愚かさは前提にして、同じテーマを一歩先に進めた感も。超お薦め。

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