雨の鎮魂歌

終わる夏休み
著:沢村鐵 写:比留間和也 幻冬社*1

生徒からの信任篤い生徒会長 一村が殺され、何かを知っているような古舘と路子の二人の様子に、徹也は――北の田舎町を覆う影サスペンス。
中学生の下半身事情を熱苦しく描くサスペンス『純情期』(小川勝己) *2に対して、本作は、中学生の感情のどうしようもないガキっぽさを克明に綴る展開。『密閉教室』(法月綸太郎) *3や『ぼくと、ぼくらの夏』(樋口有介) *4のような大人ぶった諦感はぜんぜんなくて、熱い。
後輩 由夏からの好意を無意識に感じつつも、かつて心を通じあった瞬間があった路子を忘れることができず、古舘と路子の姿を見るとやり場のない感情が迸ってしまう徹也。『北里マドンナ』(氷室冴子) *5や『男女7人シリーズ』*6 *7のような密で抜けられない仲間を、中学生にして持ってしまった悲喜劇としかいいようがありません。
ガキっぽい中学生が一生懸命背伸びして大人の言葉で綴った、といった風情の地の文が嬉しい一冊です。

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