私立!三十三間堂学院(9)

花泥棒は罪になる
著:佐藤ケイ 画:かみやまねき 電撃文庫*1

法行をベースに任命して音楽祭に出場しようと画策するギターの元天才 まこ は、元ドラマー 蕾花をバンドに誘うが、蕾花にはスティックを取らない理由が――何故ギターを選んだのか軽音楽モノ。
今巻は、法行を巡る権謀術数というよりは、『さよならピアノソナタ』(杉井光) *2から恋愛分をすべて除去したかのような、完全なるバンド結成ストーリー。
この作者の作品には、テーマにしたジャンルの蘊蓄を熱く語る傾向があります。本作の場合にも、乱舞するテクニカルタームのリズム感が、躍動する蕾花の心理にうまくマッチしている感じ。
音楽の実力だけでCDを3000枚売ったらプロデビューを認める、という父親に挑戦して、見事負けた経験を持つ まこ。その挫折が、彼女の芯の強さを形作っていて、『さよなら〜』のヒロイン真冬の《弱さ》とは対照的です。
トラウマ解消ストーリーに落とし込まなかった展開が超好み。法行は最早どうでも良くなってきた今、女の子の友情分を欲する人にお薦め。

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