少女たちの羅針盤

めろんのまち夕張
著:水生大海 装:スタジオ・ギブ(川島進) 原書房*1

本音を言っては周囲と対立する瑠美、身長ゆえに男役を振られるバタ、姉が芸能人のかなめは、演劇部を出て小劇団を立ち上げるべく、他校で柱をつとめる蘭を誘うが――四年前に小劇団で起きた殺人の真相を探る復讐ミステリ、第1回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作。
演劇集団 羅針盤を立ち上げた高校生の活躍を描く過去パートが芸名を舞利亜にかえて芸能人を続ける真犯人が追い詰められる現代パートに挟み込まれる構成の本作。
過去の事件で真犯人が被害者を攻撃するために使うのが、女の子同士の悪意とか、学校内での嫉妬とかなんですが、そのままやるのではなく、心理的な《読み》を使って他人にやらせ、自分は安全圏に逃げるやり方で、その人が必ずしもその通りに動くわけじゃない、という不確実性が折り込み済み。妙にリアルな陰湿さです。
ストリート演劇を始めて人気を得るまでの出世劇には、北島マヤが体育倉庫で一人芝居をして再起を図る「女海賊ビアンカ」/『ガラスの仮面』(美内すずえ) *2にも似た躍動感があります。街頭で演劇をするにあたってのアイディアも、「四人の女の子」ならでは。ク・ナウカとは微妙に違っていて、確かに見てみたい。
お薦め。

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