ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。

ヨン、イチ、ニ、ロク。

都会で結婚したフリーライターみずほ(30歳)は、母親が刺されて死んだ幼馴染みの未婚OLチエミ(30歳)の失踪事件を追い、地元に戻って知人たちを《取材》するが――妊娠と女女格差の微妙な関係サスペンス。
同級生同士の意地の張り合いをテーマにした『太陽の坐る場所』(辻村深月) *2とを進め、本作では、さらに母娘(孫)関係にまで踏み込んでいるんですが、「出産」を直接扱う『もうすぐ』(橋本紡) *3とは異なり、本作では、「妊娠」をベースにしつつ女同士のフクザツな関係を描くことに注力した印象です。
『負け犬の遠吠え』(酒井順子) *4的な観点からすると、チエミは負け犬にどんどん近付きつつあり、みずほは勝ち犬になりきれず、という状況ではあるのですが、外見的には勝ち犬な政美ですら、自分の《負け》に自覚的で、女の世界は、『負け犬〜』のような単純な二項対立では分類できない感じ。
男同士の喧嘩の場合、殴り合って仲直りという定番がありますが、女同士では、これといったものがないせいなのか、本作に登場する和解も、バリエーション豊富で興味深い。
神林長平+新世代作家トークショーでも触れられていた《優等生の苦悩》は本作でも堅調。大人びた秀才な女の子の裏側に隠されたドロドロに親近感を持つ方にお薦め。

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