[映]アムリタ

甘露苦いかしょっぱいか
著:野崎まど 画:森井しずき メディアワークス文庫*1

撮影の腕確かな画素さんに出演を誘われ、サークル「キネマ・マグラ」企画、天才 最早の監督映画『月の海』のコンテを手にした僕は、五十六時間連続して没頭してしまい――人間機械論、第16回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞受賞作。
裏表紙のアオリが「私の事を愛していますか?」だったので、画素と最早の間で揺れ動く僕の三角関係ものか、天才少女が映画サークルを引っ掻き回すサークルクラッシャーものか、青春映画『あどりぶシネ倶楽部』(細野不二彦) *2ものか、そんな予想をして読み始めたんですが、良い意味で裏切られました。読み終えてみれば、冒頭でこの作品の傾向は暗示*3されてました。
『ハリウッド脚本術』(ニール・D・ヒックス) *4とは違った意味で、特定の層に受ける作品を作る技術に長けた監督 最早。彼女の映画制作は、青春な共同作業ではなくて、撮影の画素、役者の僕、音響の兼森をアシスタントとして完全な支配下に置いて進むんですが、こういうカリスマなら従うだけでも嬉しいかも。
ここまで人心を掌握する最早が求める《作品》は、確かにアオリの通りでした。ちょっと前なら、電撃文庫レーベルでこういう作品が出てもおかしくなかったかもしれませんが、今だとそぐわない感じ。お薦め。

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