ミステリーズ! Vol.15

yomimaru2006-03-07

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鯨統一郎の新連載第一話「真に至る知恵」は、大河ドラマに合わせてか、〈山内一豊の妻の推理帖〉。信長の汁椀に毒を盛ったのは一体誰か、馬廻り番一豊の賢妻 千枝の推理が光ります。
どことなく頼りない夫が賢い美人の妻の掌の上でうまく転がされている点で共通する〈ミミズクとオリーブ〉シリーズ*2芦原すなお「わが身世にふる、じじわかし」。こちらの夫もまた、風采の上がらない作家でやることと言えば事件の相談を持ち込む友人の言葉を混ぜっ返すことばかり。無能な助手役ってのはこうでなくちゃ。
石持浅海「報い」では、人の精気を吸って生きる可愛い生命体ムーちゃんが痴漢の心理の動きを読むことに。同じ著者のセリヌンティウスの舟*3や扉は閉ざされたまま*4は「互いに理解し信じているはずの友人」の心理の読み合いばかりだったんですが、「悪人の心理を読む」の方が普通に感じる、というのは、思えばミステリーに毒されているような気もします。
友曰く「人には、3種類いる。ああなるかもしれないと思う人、ああはなるまいと思う人、目を背ける人」。私はホームレスを見ると「自分もいつかはああなるかもしれない」と思うタイプなんですが、笠井潔「人間の消失・小説の変貌[15] 勝者と敗者――東野圭吾容疑者Xの献身*5」を読んで同じことをまた感じたり。

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