文学少女と穢名の天使

yomimaru2007-04-28

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物語を文字通り咀嚼して消化する遠子先輩と自ら書き下ろした物語で餌付けする心葉の間を割くのは大学受験。心ならずも(?)心葉と急接近できて喜ぶななせだが――食ベたいぐらいに素敵なビター&スイート学園ミステリー。
作家としてモノを出せなくなった心葉のトラウマが、巻を進めるごとに明らかになっていくこのシリーズなんですが、今巻は特に、京極堂シリーズ(京極夏彦) *2の関口を思い出しました。
どこか心に病んだところを持っている作家 心葉・関口が語り部となり、悪口をいいつつも彼を支える探偵役 遠子・京極堂
怪異作家 関口に対して京極堂の職業は怪異を落とす神主兼古本屋。関口の作品に関連しつつも、彼の作品の批評・評論を業にしない京極堂の立ち位置は、「読者」ではない、という点で、心葉の書く物語を《読む》のではなく《食べる》遠子先輩と符合しています。
当初、遠子が単なる文芸部の読書マニアで、心葉の物語を読んで感想を言うんでもいいんじゃないか、なんて考えていたんですが、それだけじゃ作家とファンの関係から先に進めない、ということなのかも。心葉を秘かに想うななせだって井上ミウの本を読んでないんだし。
シリーズ最終巻は、遠子が井上ミウ名義の心葉の小説を読むシーンで終わる、と勝手に予想してたんですが、そうなると、遠子は「読者」で終わっちゃう。鈍感過ぎる心葉の心を射止めるのは誰だ、流人攻め心葉受けのBLエンドでも個人的にはOKなんだけど、のお薦め。

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