まっすぐ進め

著:石持浅海 画:クサナギシンペイ 講談社*1

書店で見掛けた美しい女性の左手には、腕時計が二つ。友人の紹介で彼女 秋と再会した川端は――彼女にちらつく深い闇 連作集。
友情のキモチワルサがたまらない持ち味の作者ですが、迷子の女の子をめぐる「いるべき場所」表題作「まっすぐ進め」では、親子姉妹の情愛に方向性が変わっています。石持作品のキモチワルサは、普通なら狂気・異常で済ませられるところに、ある種筋の通った論理があって、こちらが持っている常識とのずれを感じさせられるからかも。宇宙人がシミュレートした人間みたいな感じ。
秋の目に時折浮かぶ黒い影は、元妻の因縁を探る『涙流れるままに』(島田荘司) *2 *3に似たものがありますが、「ふたりの時計」で展開された論理からして、二人の関係が破綻するとは考えにくく、最後まで安心して読み進めることができました。
死を前にした父が、将来の娘の結婚相手に贈る「晴れた日の傘」は、キモチワルサのない結末。こういう作風もあるんだ的な良い後味でした。

><